CASE

インタビュー

2020.06.25 
オープンイノベーション機構
プロモーターインタビュー Vol.7

セラミックスのポテンシャルを生かした
歯科用材料の開発に着目

オープンイノベーション・プロモーター野崎浩佑先生のインタビュー。歯科臨床に携わりながら生体材料としてのセラミックスの研究をされています。注目している材料「酸化チタン」の可能性のほか、産学連携で特許申請した内容についてもお話しいただきました。

プロフィール
東京医科歯科大学
大学院医歯学総合研究科
口腔機能再構築学講座 摂食機能保存学分野 助教
野崎浩佑先生

研究分野について

まずは、先生がなぜこの分野に取り組まれているのか、研究に取り組まれた経緯など含めて自己紹介をお願い致します。

野崎:
東京医科歯科大学の口腔機能再構築学講座・摂食機能保存学で助教をしています。歯学部附属病院としては義歯外来、かぶせ物やブリッジを専門とし、取り外しの入れ歯の治療を行っています。
研究テーマは、臨床のテーマとは異なることを行っております.大学院では摂食機能保存学分野と顎顔面解剖学分野で咬合性外傷の研究で、3年間助教をした後にとある先生からご紹介いただいて、本学の生体材料工学研究所で7年間ほどセラミックスの研究を開始しました。その縁もあり、材料の研究や取り組みを行い、他の大学と共同研究にもつながりました。

先生が現在取り組まれている材料の分野で、興味深いと感じるのはどのようなことですか。

野崎:
材料の研究はある意味「やり尽くされた感」があり、最近だと歯科臨床に応用できるブレイクスルーのような研究はないです。ただ,外来診療をやっていると、これまで治せないとされていた治療でも、「こういう材料があれば治療できるのでは」と感じることもあります。「基礎の基礎」のような研究になっておりますが、私は臨床応用を目指して材料の開発をしています。臨床に応用できそうな基盤技術をアカデミアや企業と連携して研究し、実際に患者さんに使えるように橋渡しを行い、ブレイクスルーになる材料を開発したいと思っています。半導体材料などの研究報告を読んでいると、いろいろな可能性を秘めていそうだなと感じています。

例えば、インプラントではセラミックスやチタンなどさまざまな材料がありますが、先生が注目している新規の材料はありますか。

野崎:
研究テーマとして今扱っている一つに「酸化チタン」があります。チタン金属が酸化したセラミックスです。これは生体親和性が非常に高く、インプラントの表面材料に使われるのですが、酸化チタン自体に光触媒の効果があり、UVを当てると活性酸素が出て抗菌作用が期待できます。また、UVを当てると水中で水素を発生させるので、環境負荷をかけずにエネルギーを得ることができる。工業分野でもクリーンエネルギーとしても注目されている、非常に発展性がある材料です。

歯科用として使われる際にはどのようなメリットが考えられますか。

野崎:
骨と非常に親和性が高く、骨の再生を促進するという報告もあります。抗菌性の材料や入れ歯の消毒材や、歯のホワイトニング用の材料としても利用されています。ただ、抗菌作用はあるものの、「抗菌性の材料」としての機能面ではまだまだ発展途上で、トップリーダーになれるような材料に成長するには時間がかかりそうです。ホワイトニングにしても、まだ改善の余地があります。治療はできるだけ短時間・短期間で済む方が患者さんへの負担も少ないので、そういう貢献ができるような材料の設計を研究しています。

研究に取り組まれている中での苦労はどのようなことでしょうか。

野崎:
毎日苦労だらけです(笑)。臨床系の研究室に所属していますが、なかなか情報のアップデートができないのと、資材等が圧倒的に不足しています。現在は共同研究先と一緒に研究を進めていますが、別々の場所を拠点にしていることもあり、実験の進捗が遅くなってしまったり、意思疎通が取りにくいこともあります。研究室のメンバーは現在実質3名で、基礎研究をするには圧倒的に人数が足りていない状況です。新しいアイデアが他で先を越されてしまわないか、ヒヤヒヤしながら研究を進めています。

先ほど資材やコミュニケーションが不足しているというお話がありましたが、どう改善できたらいいでしょうか。

野崎:
今回の新型コロナウイルスのけがの功名でもあるのですが、ウェブ会議ツールを使ってディスカッションするのが普通になってくると、話し合いはスムーズになりそうです。実際に、海外にいる先生とのコミュニケーションもスピーディになり、格段にハードルが下がりました。ウェブ会議がスタンダードになることで、情報共有のスピードや頻度は前進するのではないかと考えています。

産学連携について

これまでの共同研究について教えてください。

野崎:
私はそこまでタッチしていないのですが、今年(2020年)2月くらいに、東京工業大学の先生とトクヤマデンタルさんとの産学連携で、特許申請しました。基礎研究と臨床研究、そして企業タイアップでの申請です。ある先生の基礎研究の発表を聞いて、臨床研究にも活かせるのではないかと私からお声がけしたのです。基礎研究で、ある程度データが出てきたら、こちらで応用できるように臨床研究を進めていきたいと考えています。

基礎研究の先生との出会い、トクヤマデンタルさんとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。

野崎:
先生とは、私が生体材料工学研究所に行くきっかけとなった「特異構造金属・無機融合高機能材料共同研究プロジェクト」においてです。東北大学、大阪大学、名古屋大学、東京工業大学、早稲田大学、そして本学で共同研究していこうというプロジェクトです。
トクヤマデンタルさんとは、摂食機能保存学分野の臨床研究でお世話になっておりました。そこで橋渡しをしたんです。

その経験から、先生がよかったと思うことなどはありますか。

野崎:
東京工業大学の先生は、特許申請を非常にスムーズに対応して下さいました。今回、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)にも申請をしているのですが、どのように申請すれば通りやすいのか、などは非常に勉強になりました。

一方で、苦労された点や反省点などはございますか。

野崎:
反省点は挙げるときりがないんですけど(笑)。一番痛切に感じたのが、歯科の臨床では、最後に形になっていないと難しいんですね。被せ物の材料を作るにしても、どういった形になるのか、既存の材料で優れているものが多いので、それに対してどういったアドバンテージを持っているのか、とかですね。臨床の立場で考えると、本当にそれが実現できるのか、色々考えることはありましたね。

歯科は保険が適用される材料とされない材料があるので、その点がネックになることはありますか。

野崎:
今回は偶然にも高額な材料は使わずにできたので良かったです。セラミックスは原材料が比較的高額ではないものが多いので、あまり気にする必要はありませんでした。高機能なものを付与していく場合には、貴金属やレアアースなど高額な材料を使うこともあるので、商品化するにはメリット・デメリットを慎重に吟味しますね。

プロモーターとしての取り組み

今回、プロモーター教員という形で参加された理由などございますか。

野崎:
分野長から推薦いただきました。自分が持っているシーズや、他で優秀な基礎研究をされている基礎系の先生と企業の橋渡しができたらいいなと思います。材料の研究をしていたので、歯学部にいる他の先生より比較的材料の分野に理解があること、歯科用の材料以外に一般的な材料の知識もある。そうした情報を歯科の分野で生かせるのではないかと考えています。
例えば、セラミックスには電気的な性質があります。電池の材料としての研究が進められているんですが、それを歯科や生体材料の分野にうまく橋渡しできればと思っています。

橋渡しをする先の企業のイメージや、目標はありますか。

野崎:
歯科材料だと、大手企業との連携です。夢物語ではありますが、ベンチャーを立ち上げられたらいいですね。

その目標を実現するに当たって、オープンイノベーション機構からサポートを受ける場合、どのようなことを求めますか。

野崎:
現状は実動部隊がいないのでサポートしてもらえるか怪しいですが(笑)。実験する人や情報を共有できる方をアテンドしていただけるといいですね。生体材料工学研究所では、他大学の学生を預かって研究していました。そういう仕組みが歯学部でもあると非常に助かります。

ベンチャーを立ち上げるとしたら、不安要素や課題などはありますか。

野崎:
骨補填材が比較的ゴールに近いところまできていると思います。最終的には、臨床の先生にどれだけ使ってもらえるかにかかってきますが、目安としては、既存材料に対して1.1倍や1.2倍程度の良さでは、正直あまり使ってもらえないと思うんです。かなり高機能な材料を作ってエビデンスを出さないとならない。そうしたデータが出せる研究環境があると助かりますね。ただ、日中は学生の実習や外来診療に多くの時間を割いて、その後に研究を行うため、研究が後回しになってしまうのが現実ですね。

歯科の臨床データを集めるには、どのような実験をするのでしょうか。

野崎:
まずは動物実験を行います。骨補填材であれば、骨がシビアな状況からどれだけ回復するのか、たくさんの骨ができるのかというデータを持つのが優先です。人に使う場合は事前に説得できるだけのデータを集めることが必須ですし、企業とも話を進めなければなりません。
幸い、動物実験施設は非常に優れており、サポートも充実しているので助かっています。ただ、人数も少なく、日常の臨床の合間に実験するのは難しく、手が回っていないのが実情です。研究を推進するような人集めも必要ですね。

先生がイメージする産学連携のパートナー像を教えてください。ベンチャーを立ち上げるとしたらどのような企業と組みたいですか。

野崎:
私の研究はセラミックスがメインになってくるので、歯科用材料を商品化するにはさまざまなノウハウを有する大企業が望ましいです。商品化にあたっては、研究室規模の小ロットではなく、スケールアップしたモノ作りが必要です。そうしたノウハウを持っている企業とタイアップさせていただくことが理想的ですね。特に、セラミックスなど元々材料を取り扱っている企業さんですと、なおいいかもしれません。歯科材料の企業はポリマーやセラミックス、金属などに分かれていますのでその中でフィットする企業と連携できればと思います。

学内では学会などでつながりがあると思いますが、材料系の企業と出会うには、研究内容や材料の面白さをどのように伝えればいいのでしょうか。

野崎:
むしろ私が教えてもらいたいですね(笑)。セラミックス関連ですと「公益社団法人日本セラミックス協会」という学会があるのですが、建築材料や電子材料、その他生活に必要なあらゆるセラミックス材料を取り扱っているため、生体材料の分野は端の端にある感じなんです。ただ、セラミックスを得意として企業が集まる学会もありますので、そういった場で情報発信できればと考えています。

最後に

先生ご自身について、ご趣味やこういう仲間が欲しいなどあれば教えてください。

野崎:
運動は好きなので、休日は家の近くを走ったりしています。また、最近は息子と公園のアスレチックによく行っています。
あとは旅行ですね。学会ついでに散策することが多いのですが、お酒が有名な地方は好きですね(笑)。
お酒は基本なんでも好きですが、日本酒でしたら醸造元が有名なところに足を運んだりします。北海道では、ニッカウヰスキーで有名な余市の蒸留所を見学しに行きました。宮城でも、研究室の人と一緒にニッカウヰスキー仙台工場・宮城峡蒸溜所に見学に行ったりもしましたね。

ありがとうございました。

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